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個人の所有率は、六0年代に四0%台に落ち、七0年代には三0%台、八五年には二五・四%まで下がった。
さらに、全国証券取引所協議会が八七年七月末に発表した八六年度の株式分布状況調査の結果では、個人は二五%を割って二三・九%になっている。
個人所有の比率は、三分の一にへってしまった。
一方、金融会社の所有率は、四九年当時の九・九%から八五年の四0・七%へと、四倍以上にふえた。
また、事業法人も、四九年の五・六%から八五年には二五・六%へと五倍近くふえた。
両者を合わせると、八五年には株式総数の六六・三%を占めた。
個人が排除される一方で、金融会社や事業会社などが大半の株式を所有し、株式市場の支配力を強化した。
これは「機関化現象」と呼ばれている。
日本の経済成長とともに、会社は栄えたが、個人はやせほそったわけだ。
「機関化現象」は、なにも株式にかぎったことではない。
国民のマネーや資産が吸い取られ、金融企業や事業会社に集中した。
しかし、「機関化現象」というだけでは、必ずしも正確ではない。
会社といっても、ピンからキリまであるかし、一らだ。
持てる者が大儲けした「新人類相場」八五年の株主総数は二一二三万人だが、同じ株主でも一0万株以上の所有者は0・八%にすぎない。
だが、株式総数の実に七五・八%を占めている。
株式所有者の一%にも満たない大株主が、四分の三以上を手中にしているわけだ。
よくいわれる「一億財テク時代」は名ばかりで、より多く持てる者(大企業)だけの財テクが進行してきた。
これらの大企業は、海外進出や大量の人員削減を強行した裏で、あり余ったマネーや資産を財テクに注ぎ込んでいたのだ。
「経営危機」を口では叫びつつ、財テクで大儲けしたわけだ。
N証券が代表する日本の証券界の詐欺的マネー・マジックは、こうした大企業の背信の財テクを推進した。
その結果、N護券ばかりでなく、日本の株式市場そのものが〈常識の服を脱ぎ捨て〉てしまった。
今度の大暴落までは、株価は先人未踏の高値をつけていた。
その相場をリードしてきたのは、カネ余りの機関投資家だったが、直接、その資金運用を担当しているのが若いファンドマネージャーたちだったところから、「新人類相場」ともいわれてきた。
「新人類相場」とは、どんな経済学理論や経済指標を使って説明しようとしても説明がつかない、奇妙極まる異常相場という意味だ。
N証券の新社歌流にいえば、〈常識の服を脱ぎ捨て〉た相場ということになる。
を解雇した。
八七年の財テク資産上位の企業を見れば、財テクの主人公がより鮮明になる。
T自動車の一兆五一七一億円をトップに、M電器、M商事、N自動車、M物産、日立製作所の順で。
この五位までの全社が一兆円以上となっている。
また、八六年度の財テク利益は、N自動車の一二五四億円を筆頭に、T自動車、M電器、日立製作所とつづき、I重工の五八九億円までが上位五社となっている。
『拙著ラーッポン空洞化』では、日本の産業「空洞化」の先頭に立っている代表的な大企業六社を追跡したが、そのうち四社までが財テク利益上位五社のなかに入っている。
追跡しなかった日立も、同様に「空洞化」を推進した企業だった。
とくに、I重工にいたっては、八六年の年の瀬に、全従業員の三人に一人に当たる七000人を、事実上の指名解雇で追放し、その後も一方的な出向に応じなかった組合活動家株価のグラフが未踏の急な上り坂を登っている最中に、東京証券取引所の「生き字引」の一人、日本店頭証券の岡田文夫取締役業務部長を訪ねた。
彼は、証券取引所が戦後、四九年に設立されるとともにその職員となり、いま問題のインサイダー取引などを監視する売買審査部長をつとめた。
八二年の定年後から現職についている。
彼の話は終始ひかえめだったが、株式相場の変遷を語ってくれた。
「われわれが一番最初に取引所に入って教わったことは、株価と債券が反比例していくということでした。
利回りが基準になっているから、株価が上がって利回りが低くなると、債券を買った方が有利になるということです。
いまは、それもぜんぜんくずれています。
もう株価のメジャー〔物差〕はなくなっちゃいました。
その後、途中で。
ER〔株価収益率〕というメジャーをつくったりしましたが、それも飛び越えちゃいました」株の利回りとは、その株の時価で年間配当額を割ったものだ。
たとえば、一株五0円の額面で年間配当金五円(配当率一0%)の株を、時価一00円で買ったとすると、利回りは五%となる。
その株を発行している企業は、原則として業績によって配当額を決める。
業績によって配当額が上下し、配当額の上下によってその株価が上下していた。
もし、業績も配当も上がらないのに株価だけが上がれば、利回りはそれだけ下がり、マネーはもっと利回りのよい銘柄の株や別の儲け口を探して逃げていく。
その結果、上がりすぎた株価も下がるという市場原理が作用した。
だが、配当率や利回りも無視して株の時価は天上知らずで上昇してきた。
とくにここ数年の株価上昇は異常で、当然、利回りを異常に低くした。
八二年の平均利回り(東証第一部加重平均)は、すでに一・八%という低い状態だった。
だが、五年後の八六年の平均利回りは、一%の壁も破って半分以下の0・八三%まで下がった。
八六年一二月には0・七%となり、八七年に入ってから岡田業務部長はつづけた。
「昔は個人の仕手というのがあって、資力のある個人が仕手を通じて売買し、仕手戦というのがありましてね。
いまは、法人の攻勢で個人がだんだん少なくなってきましたね。
もう個人市場じゃなくなっちゃいました。
いまは企業の新人類が運用している。
もうだれが売り買いしているかわかりませんね。
何十年もつちかってきた経験なんて、もうだめです。
お医者さんでいうと、昔は町医者が患者さんの顔色をみて診断していた。
いまは顔もみないでデータだけで「売った」『買った』とやってます。
外国からの注文も顔をみないでやってるわけです」東証一階の立会場では、場立ちのサインなどによる人手の売買取引がおこなわれているが、上場会社約一五00社のうち売買高の多い二五0銘柄にかぎられている。
あとの銘柄は、地階のシステム売買室で、しまっている。
の急激な株価上昇はさらに利回りを押し下げた。
低利回りの原因は、企業が正当に配当していないことなどにもあるが、利回り0・七%というと、期間一年の定期預金の利率三・三九%(八七年九月一七日現在)の五分の一に近い。
この定期預金の利率を基準にするなら、株価は五分の一に暴落してもおかしくないということになる。
さらに、大暴落直前の一0月一三日には、最高値を更新して平均株価二万六四0一円となったが、八六年の平均株価一万六四0一円の一・六倍であり、八分の一に暴落してもおかしくないという恐ろしい計算になる。
これだけ低い利回りでは、配当金のうま味はゼロに近い。
投資した資金が企業の生産・営業によって利益を生み出し、その利益の一部が配当される。
投資家がそれをじっくりと待つ意味は失せてしまった。
値上がりによる値ザヤ稼ぎの意味しかない。
異常な株価自体が、もう投機しか受け付けない相場をつくって「新人類の買い方というのは、もうちがうんです。
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